私のテニス理論
■ スライスサーブは、面の向いている方向に飛ぶ
◆意識改革
スライスサーブを習得するには、まず初めにイメージの意識改革が必要です。
そのイメージとは、「スライスサーブは、ラケットをスイングする方向に飛ぶのではなく、
面の向いている方向に飛ぶ」
ということです。
プレーヤーを真上から見たとすれば、打つ目的の方向線に対して、ラケットフェースが直角に交わる面の方向を保ちながら、スイングはその線に対して 45度の方向に振り抜くわけです。初心者の方には、この時、面の向き自体を 45度傾けてしまうという誤ったイメージを持ってしまう人が多いようです。面を傾けてしまっては、ボールはガットとの摩擦力で飛ばすようなものですから、死んだボールしか飛びません。
つまり、例えばコートの真ん中からセンターライン上をボールが飛ぶようにしたいのなら、面の向きはベースラインと一致します。(ボールとガットとの摩擦がある関係で誤差が出ますので、そこは経験と感で修正しましょう)
回転のかかったボールは飛びながら左にカーブしますので、それも計算に入れる必要があります。
振り抜く方向を 45度から、徐々に鋭角にすることにより、回転よりもスピードを重視したサーブを打つことが可能です。この鋭角の度合いを、インになる確率と照らし合わせて限界に達したところがあなたにとってのフラットサーブです。
無回転のサーブをフラットサーブと思っている方が多いようですが、それを狙えるのは身長が 190cm 以上の選手、またはジャンピングサーブです。そうでなければ置きに行くサーブしか打てません。
以上のことからわかるようにスライスサーブはサーブの基本です。フラットサーブを習得するにも、まずは正しいスライスサーブを習得するのが先決です。
◆サーブを修正するには
例えば、スライスサーブを打った方向が、狙った方向より、右の方向に飛んでしまったとします。この時次のサーブを補正するために、少し左寄りにスイングしても方向はほとんど補正されないはずです。この場合方向を補正するのではなく、結果的に回転数を少なくしてしまったことになります。もし方向が修正されたとしたら、面がぶれてしまったということです。
つまり、もしスライスサーブの方向を修正したいのなら、スイングの方向を意識するのではなく、フェースが目的の方向を正しく向いているかどうか、または、面ぶれはないかどうかを意識して修正する必要があります。
回転が少なすぎて確率が悪いときや、もう少し球速がほしいと言うときに初めてスイングの方向を意識して練習します。
◆手首を上手に使う(改)
アマチュアプレーヤーの多くに共通した悪い癖があります。それは手首の使い方です。手首を振ってしまうのです。手首を支点にしてドアをノックするような動きです。手首がこのような動きをすると、ラケットフェースはおじぎをするような動きになってしまいます。これでは面を安定させるのは困難です。これを直さない限り、俗に言う「おばさんサーブ」、「羽子板サーブ」から脱出することはできません。
サーブを打つ瞬間の手首は、腕の外側のラインと手の甲を結んだラインが一直線になるように手首を安定させます。といっても手首をがちがちに固めるわけではなく、リラックスして力を抜き、打つ瞬間をその状態に安定させるようにします。そしてインパクトの前後ではその面の向きがキープできるよう、手首の角度を柔らかくアダプトさせていきます。
サーブは腕の内転と内旋を使用して打ちますので、手の甲が外側に曲がった状態で腕を内転させたとしたらラケットフェースは上空を向いてしまいます。
手首を逆に内側に曲げれば、より内転がいきるようにも感じますが、これも誤りです。もっとも高い打点でインパクトするためには、その瞬間の手首の外側の線がまっすぐになるようにもっていくのがベストです。
◆第2の意識改革
もう一つ意識改革が必要なのは、
「サーブは打点より上に振り抜く」
ことです。
サーブとは、高い打点から低い地べたに向けて打つために、多くの人がサーブに対して打ち下ろすイメージを持ってしまっているようです。このため鈍足サーブをネットにかけてしまうという最悪のパターンにはまってしまいます。
私も初めはこの誤ったイメージを持ってサーブを打っていました。ところが私はその昔、運良く「サーブは上方向に打つんだー」と気が付かせてくれる場面に出くわしました。
その場面というのは、おそらく試合の順番待ちをしていたときのことでしょうか。座って休憩しながら、少し離れたところでダブルスのゲームを行っているのを何の気なしに眺めていました。そのゲームが行われているコートは、隣がすぐフェンスだったのですが、等間隔の柱に金網の貼ってあるごく普通のフェンスでしたが、その金網に水平方向にまた等間隔に水平でまっすぐな針金が張ってありました。私は真横から眺めていましたので、まるで長方形の升目で切ったグラフ用紙の隣でテニスが行われているようでした。黄色いボールは綺麗な放物線をその『特製グラフ用紙』に描き出していました。
ボールの軌跡を眺めていると、深くて良いコースに入るサーブは全て、打点よりも高いところを通ってから落下しているのです。(蝿のとまりそうなサーブというわけではありません。速度にして 120km程度のサーブです。)
上に向かって飛ばないボールは全てネットにかかるのが手に取るようにわかりました。ボールは引力によって地面に引っ張られていることも実感できました。みなさんもフェンス際でゲームをしている人を遠くから見る機会があれば注意してみて下さい。サーブは上方向に飛ばすということがよくわかるはずです。
また、上方向と表現すると、言葉だけではかなり上を意識してしまいますが、実際にはほんの少しだけ上ですので、自分で人のサーブを遠くから見て確かめて下さい。
(話はそれますが、ストロークのボールの軌道も、ネットよりかなり高いところを通ってもアウトにならないことに気づきます。)
上方向に打つとはいっても、ラケットフェースを上に向けてしまっては、ボールはスッポ抜けてアウトになってしまいます。フェースの向きのイメージが、サービスラインに行ってしまっているのを、サーブの速度に応じて、ベースラインから相手レシーバーの顔の方向に向けます。相手レシーバーの顔へ向けたときでもフェースは若干の下向きだということを認識してください。相手レシーバーの顔より高い位置でボールを打っているわけですから。
そしてインパクトの瞬間より、インパクト直後の方がラケットは高い位置を通過するスイング軌道を描くことにより、深くてベストなサーブになります。このことから、サーブの打点は手の届きうる一番高いところで打つのではなく、打点より上に振り抜ける限りで一番高い位置で打つのが正解です。トリッキーなムーンボールのようなスピンサーブを打つのなら、フェースは上を向くでしょう。
スピンサーブといえば、先ほど言った「スイングの方向ベクトル」をよりY軸方向に傾ければ(背中が地面に向くように体の軸を傾ける/のけぞってはいけません)スピンサーブの出来上がりです。この意味でもスライスサーブはサーブの基本です。もちろんY軸方向にスイングするためには、自ずと体全体のフォームは変わりますのでそれなりの体力が要求されます。