私のテニス理論

■ なぜ、切れる前のガットを張り替えなければいけないの?

 
 「私、張り立てのガットって、硬くて嫌い!」という声を耳にしますが、この人の言うことももっともです。しかしそのことがその人の上達を妨げているのも事実です。

 


 

 我々人間に与えられた「手」という道具は、信じられないほどすばらしい能力を持っています。例えば感触を感じとる能力と、適応力です。このすばらしい能力によって我々はテニスという複雑な運動をこなすことができているのです。
 しかし、テニスでは時として、このすばらしい能力が仇になってしまうことがあります。というのは、

・伸びきってしまったガットを通してでも、ボールの感触を感じとってしまい、

・伸びきってしまったガットによるボールコントロールにも適応してしまう

のです。

 ところが、このすばらしい手の能力は、張りたてのガットのもっている、すばらしい反発力と、ボールのコントロール性を通しても発揮されることは言うまでもありません。

 よりレベルの高いテニスを目指すのなら、手を性能の良いガットに適応させた方が得策です。

 ◆なぜ、張りたての高性能なガットを硬いと感じてしまうのか?

 それではなぜ、張りたての高性能なガットを硬いと感じてしまうのでしょうか?
 答は簡単です。張りたてのガットと、張って3ヶ月たったガットでは、テンションが全然違うのです。

 例えば、筆者の普段使っているラケットは、60-Pound で張り上げますが、張り上げ直後の面のテンションは、70-Pound 位(GAMMA 社製のテスター使用)に張り上がります。それを放った状態で、12時間後には、5-Pound 位減衰します。テニスに使用しながら、3日後から1週間位の間は、60-Pound 位で安定しています。このあと3ヶ月も経つとあと 10-Pound 位は減衰します。つまり 50-Pound 位まで落ちています。
 もしこの時点で、ガットを張り替えたとすると、70-Pound にアップしてしまうわけです。突然 20-Pound もアップすれば、50-Pound に適応している手にとっては、硬く感じるのは無理もありません。これが、

 「私、張り立てのガットって、硬くて嫌い!

の原因なのです。
 おまけに、悪いことに伸びきったガットは、張りたてのガットに比べ、テンションの変動も小さく、より長期にわたって安定しているのです。
 逆の見方をすれば、ガットはおいしい時期ほど短いのです。ガットにとっての「美人薄命」です。

 筆者は上記のことから、張りたてを硬いと感じないで済む限界は、2週間だと提唱しております。しかし、アマチュアプレーヤーにとっては厳しいでしょう。よりレベルの高いテニスを目指すのなら、どんなに長くても1ヶ月に1度は張り替えましょう。
 もちろん温泉場で卓球をするような感覚でテニスをするのも、一つのテニスの楽しみ方ですので、そんな方に張り替えを勧めるつもりは毛頭ありません。

 

 ◆好調をお金で買えると思えば、ガット代も高くはない

 アマチュアプレーヤーにとって、好調を常に維持するというのは容易なことではありません。昨日あれだけ絶好調だったサービスが、一夜あければボロボロという経験は誰もが経験しているところでしょう。
 ところが、高性能なガットを1日使用してボロボロになったところで、張り替えさせすれば、また高性能に戻るのです。

 コンスタントに試合にでている人ならお分かりのことと思いますが、勝ち進む選手の第一条件は、一発の力より安定感です。

 お金を出すだけで、自分のテニスの一部の条件が安定するなら、ガット代も決して高くはありません。

 そういう意味では、ボールや、や、グリップテープも安定させたいですね。(ゴルフプレーヤーに比べれば、安い!安い!)

 

※ ストリンガーからの格言

「高価なガットを、たまに張り替えるより、安価なガットを頻繁に張り替えましょう」
 


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