私のテニス理論
「マラソンの選手は、なぜ苦しい思いをしながら走り続けるのでしょう?」
「ボクシングの選手は、なぜぼこぼこに殴られながら戦い続けるのでしょう?」理由は簡単です。その困難を乗り越えて、相手に勝つことが楽しいのです。
テニスでも「強風」という困難を乗り越えて相手に勝てば、また喜びもひとしおです。ここでは、この困難を乗り越えるための考え方をご紹介します。
相対性理論とまではいきませんが、物体の速度はそれを観測する人の、見る場所によって変わってくるのはご存じですよね。例えば、時速100Kmで走る電車をそれと並行して走る時速90Kmの自動車から眺めた場合、その電車の速度は時速10Kmにしか見えないはずです。
テニスに応用して考えれば、
「風のないベストコンディションの自分」から「強風で調子を落としている自分」
を眺めたのでは、速度は極度にマイナスになって見えてしまいます。
それでは、どこからどこを眺めればよいのでしょう?
「風でえらく調子を落としている対戦相手」から「同じように風でえらく調子を落としているが、相手よりは少しだけその落ち込みが少ない自分」
を眺めてみてください。 相手からみて自分はわずかながら前進しているはずです。おもしろいことに自分は後退しているにも関わらず、相手からは前進して見えるのです。
つまり強風の日は、調子を落とさずにプレーをしようなどと考えるのは邪道で、「調子を落とす量を相手より少しだけ小さくする」ことを心がけるべきなのです。言い換えれば、「相手と、調子を落とす量を少なくする競争をして勝つ」わけです。
ベストコンディションにおいては同じ実力の対戦相手だとしたら、強風のおかげでこの日の試合には勝てるはずです。きっと勝利の瞬間、強風に感謝したくなることでしょう。「強風の日はテニスが楽しい」とはこのことです。
この題名を見て、誰もそれはおかしいとは思わないでしょう。
ところが、この題名の内容についてよーく考えてみてください。良夫は50m競争の太郎のタイムより速く走ることは決してできないのです。つまり自分よりスピードの速い相手にスピード競争で勝つことができるんです。つまり良夫は「障害物」を自分の見方にしてしまったのです。
もうおわかりでしょう。テニスでも風という「障害物」を自分の見方にしてしまえば、普段は勝つことのできない相手にも勝ってしまうかもしれないのです。
ピンボールというゲームをご存じでしょうか? 鉄のボールを2つのパドルでうち続けることによって点数を稼ぐあのゲームです。真ん中の穴に落ちたらゲームオーバーです。
ところであのゲーム、もしボールとパドルだけで、なおかつ穴に落ちてゲームオーバーになることもないとしたらどうでしょう? なんと味気ないことでしょう。
ゲームというのは「障害物」があるから楽しいのだということに気づかされることでしょう。テニスでは、「ネット」、「相手のボレーヤー」、「相手が打ちはなす強力なサーブ」、「どんなボールにも追いすがる相手のフットワーク」、これらすべては自分にとっての「障害物」であり、またこれらがあるからテニスが楽しいのです。そこに「強風」という「障害物」が1つ加わったわけですから、楽しみが一つ増えたと考えることはできませんか?
そんな目で眺めれば、風によって、ボールが予想に反した滑稽な動きをするのでとても楽しいですよ。