私のテニス理論

■ 日本のグリップは細すぎる!

 

 私はかつて、テニスのグリップサイズは、一番強く握力の出せるものが最適だと思っていました。ところがそれはとんでもない間違いであったことがわかりました。ここではその理由をご説明します。

 



■握力を最大にすると手首は曲がらない■

 握力と手首の柔らかさには密接な関係があります。

 今、実験をしてみましょう。拳を力一杯握りしめてみてください。そしてその状態で手首をくねくね曲げようとしてみてください。意に反して手首は全く曲がらないと思います。このことから

 柔らかい手首 = 握力の抜けた手首
 手首が硬い人 = 強く握りしめて打球する人

だということが理解できると思います。

 次にラケットを使用した実験をしてみましょう。バックハンドストロークの素振りで、手首が硬いとどうなるかの実験です。

 イースタングリップでもウェスタングリップでもかまいませんので、ラケットフェースを腰の高さの打点に、面の向きを平ら(ネットの網目と同じ向き)にセットしてください。ここで握力を込め、力んだ状態で、手首を固定したまま45度上前方に向かって、頭より高い高さまでゆっくり振り抜いてみてください。そのときのラケット面を観察してください。打球面の向きはどんどん上方向に向いてしまうと思います。
 このことから握力の入った手首の硬いグリップで速いスイングをしようとすると、打球面が上を向いてボールは当然アウトしてしまうことが理解できると思います。上向きの面でコート内にボールを納めるためには、スイングスピードを遅め、万有引力でコートに収めるより仕方ないわけです。つまり手首が硬いと速いボールは打てないのです。
 速いボールを打つために必要なトップスピンをかけるために、面を平ら(正確には微妙に上向き)に保ちながら下から上まで振り抜くには、手首の角度を柔らかく徐々に変えてやらなくてはならないのです。先に述べましたように手首を柔らかくするためには、握力を抜く必要があります。ところが握力を抜くと面ぶれが起こりやすくなります。握力を抜いても面ぶれを防ぎたい場合どうすればよいでしょう? 答は簡単、グリップサイズを太くすればよいのです。
 幸い、太いグリップは握力が入りづらいので、意識的に握力を抜こうとする努力も必要なくなります。

 握力が強く入りやすいグリップは細めのグリップですので、力を入れやすいことを基準にグリップサイズを選考すると、テニスの上達にとってとんだ落とし穴になりますのでご注意ください。以前は落とし穴に落ちていた私は、グリップサイズ=2を使用していましたが、とんだ間違いだということに気づき、現在は 4グリップ(日本で販売されている最大サイズ)の上に巻き替え用グリップを1枚巻き、その上にオーバーグリップテープを1〜2巻きし、グリップサイズ≒9 でちょうど良いと感じています。グリップサイズ=9 というと「エー!」と驚く人が多いですが、この9というのは4+9/8 のことですので、整数に直すと8*4+9=41です。グリップサイズ=3は、8*4+3=35 です。35と41の差ですので、驚くような差ではありません。
 私が今試しにグリップサイズ=2 でボールを打とうとすると、その力の入り方から、手首を怪我しそうな感覚を覚えます。

 私に太いグリップがよいとアドバイスをしてくださったのはオーストラリアのバークレーコーチですが、その小学生の息子さんでさえ、私より少々細いくらいのグリップを使用していました。
 プロの使用しているグリップを見てみても、男子でグリップ2を使用している選手は見たことがありません。

 これは私が推奨するグリップサイズの判断基準ですが、軽くグリップを握って、中指の先端と親指の根本の土手の部分の隙間に、左手の人差し指を入れ、それがつかめるようでしたら、細すぎと判断した方がよいでしょう。

 

 

 

 

 

 

■返品を嫌い在庫を減らしたいラケットメーカー■

 それではなぜ、日本のテニスショップにはグリップ3までしか置いていない場合が多いのでしょう?

 例えば、あなたがグリップ5のラケットを買ってきて、家に帰ってグリップについているビニールを剥ぎ取り、素振りしてみたところ、グリップサイズが1サイズ私には太かったと感じたとします。自分でグリップを削るのはほとんど不可能ですから、あなたのとりうる手段は返品ですよね。ショップにとってはとんだ迷惑です。
 ところが、あなたの買ったグリップが3で、これでは1周り細かったと感じた場合はどうでしょう? 細い分にはオーバーグリップを1枚巻けばいいか。と妥協してしまうことでしょう。またグリップを太くするためのグッズも販売されています。
 つまり細めのグリップを売っている分には返品を食らわないのです。

 さらにグリップの種類が2と3だけなら2種類の商品だけ在庫すればよいわけです。メーカーにとってもショップにとってもこれは非常に都合がよいことなのです。

 ところが、お人好しの日本人テニスプレーヤーにとっては、とんでもない誤解を生んでしまっているのです。グリップサイズ2と3しか生産していないということは、4、5、6なんてとんでもないサイズだ。普通の人は2や3を使うものだと思ってしまうのです。メーカーの都合で上達を妨げる道具を使わされたのではたまりませんよね。

 私からメーカーに提言したいのは、在庫の種類を減らしたいのでしたら、1、2、3 や、2、3、4 とそろえるのではなく、1、3、5 や、2、4、6 として在庫を減らしてください。ワン・サイズはグリップテープでカバーできるからです。そして日本人のレベルアップに用具面から貢献していただきたいです。革命を起こしてください。

 アメリカでは4、5もちゃんと在庫しています。アメリカ人はメーカーのいうことより自分の感覚を信じているからでしょうか? アメリカ人は日本人より手が大きいんだと思いこんでいる人もいるようですが、足の長さは違ってもて、手の大きさはそれほど変わらないはずです。

 

■グリップが太いほど面の微妙なコントロールが可能■

 グリップが太いと面がコントロールしづらいと思っている人がいるようですが、それは間違いです。握りが太いということは、細い場合に比べ、たくさんねじっても面の向きの変化が小さいわけです。言い換えれば、より微妙に面の向きをコントロールできるということです。

 例えばサーブを打ったとき、面の向きの角度が左右に1度狂うとボールの落ちる場所は30cmも狂うのです。面の向きを微妙にコントロールできる太いグリップが、その狂いを減少させるわけです。

 

■何事も自分の感覚で判断しよう■

 とはいっても、自分にとって何が適しているかは、自分で使用して判断しましょう。もしかしたらあなたは特別な人で、グリップが細い方が力が抜け、微妙な面のコントロールのできる感覚の持ち主かもしれません。(いたとしても100人に1人でしょう)
 おそらく、細いグリップと太いグリップのどちらも使い込んだ上で、細いグリップを選んで使用している人はほとんどいないと思います。両方を1ヶ月以上試用してみて判断してみてください。

 一般的には、今まで細いグリップを使用していた場合、太いグリップに乗り換えると、かなりの違和感があります。今まで入っていた無駄な力みがそう感じさせるのかもしれません。ところが1、2ヶ月使用し続けると、無意識の間に無駄な力が抜けてきているため、細いグリップに試しに戻した場合に、細いグリップが間違いであったことに気づかされると思います。

 今使用しているグリップの上に、厚さ 2mm の巻き換え用グリップを1枚巻くと、グリップサイズが3〜4程度アップします。
 上にオーバーグリップを巻くと角がなくなって面の向きが感じられないと思っている方もいるかもしれませんが、ラケット面は左手を使用して感じ、その状態を右手で軽く握るのが正しい面の作り方ですので、丸いグリップでも全く問題ありません。右手で感じる面の向きは、いくら角が切ってあったとしてもかなり不確かなのです。

 プロの選手の左手の使い方を見ると、以下の二つが主流なようです。わたしはAタイプを使用しています。

A. 人差し指を触手にしてガットを触り、面を感じる

B. フレームに指を這わせて面を感じる

 信じられない人は、プロのラケットをビデオで見て確かめてください。
 例えばグリップ=2のラケットを遠目に眺めると、柄の部分とグリップ部分の太さはほとんど変わらず、ずんどう状態に見えるはずです。ところが男子プロの使用しているラケットの場合、皆柄よりグリップの方が太くなっているのがわかると思います。4より太くなければそうは見えないはずです。テクニック的に未熟な我々アマチュアプレーヤーならプロより太いグリップを使用するのが妥当です。

 一度、だまされたと思ってグリップを太くしてみてください。手首が柔らかくなってきたとしたらそれは大成功です。グリップを太くしただけで手首が柔らかくなるなんて、「風が吹くと桶屋が儲かる」みたいでおもしろいですよね。

 

 


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