私のテニス理論

ブレーキが急になればなるほど、乗っている物は勢いを増す

___球速を上げる方法

 伊達公子選手や平木理化選手を見ていて、なぜあのきゃしゃな体で、あんなに速いボールが打てるのだろうと思ったことはありませんか? また逆に、相撲とりやボディービルダーにテニスをやらせても、速いボールを打てるとは思えませんよね。
 速いボールを打つためには、筋力はそれほど重要な要素ではないのです。ここでは、その球速を上げるための要素の内の1つをご紹介します。


 

 仮に私が、バスに乗って吊革につかまらずに、前を向いて立っているとします。

1.運転手が普通にブレーキをかけたが、吊革につかまっていなかったので、私は前方に少しよろめいてしまった。

2.運転手が突然急ブレーキをかけたために、私は勢い余ってバスの一番前の方まで走って行ってしまった。

3.運転手が運転を誤りコンクリートウォールに激突したため、私はバスのフロントグラスを突き破り、車外に投げ出されてしまった。

 あなたがもし、路上から上記の3つのケースで、バスと比較した私の動きだけを見ていた場合、当然 1 よりも 2、2 よりも 3 の方が、スピードが速いことはおわかりになると思います。
 でも、私は特に前方に向かってジャンプしたわけでもないのに、なぜこの速度の違いが出てくるのでしょう。
 もうお解りですね。走っているバスのブレーキが急になればなるほど、立っている私のスピードはアップするのです。難しく言えば、慣性力の大きさが違うわけですね。

 このことをテニスに当てはめたい場合、どう当てはめればよいでしょうか? そうです、バスが選手の体で、乗車している私の体がボールになればよいのです。つまり速いボールを打つためには、ただ力んでラケットを振り回すだけではダメで、体の一部に急ブレーキをかける必要があるのです。
 その体の一部が力の支点になるわけですが、その支点は打つショットによって何種類かあります。

 例えばフォアストロークでは、右肩が支点になります。ストレートのショットで、打つ人を真上から見た場合、左肩と右肩を結んだ線をベースラインに対して時計回りに 90度より大きくひねります。これがテイクバックです。そしてボールを打つためにその肩の線をベースラインと同じ向きに戻して行くわけですが、ちょうどベースラインと一致したところで、右肩をストップさせればよいわけです。こうすることにより肩から先の、肘、手首、ラケットフェースの速度がアップするわけです。もし、肩の線がベースラインの線を追い越してしまったり、とどかなかったりすると、その分だけボールのスピードは落ちてしまいします。もちろん、クロスのショットを打つ場合は、その分ストップするラインが、ベースラインから少しずれることのなります。
 よくテニス雑誌などで、フォアストロークの際に右肩をブレークしなさいと言っているのはこのことです。
 また、最近の傾向として、肘の曲げや、手首のひねりを利用して、肩から先の各パーツも上手に支点として利用されています。

 またサーブでは、人によってその支点になる体の部分が異なります。一昔前までは、右肩を支点にする選手がほとんどでした。ところがサンプラスの登場以来、右を支点にする選手が増えてきました。なぜならその方がさらにスピードがアップするからです。
 これも球速を上げるための一つの要素なのですが、回転運動する物体の回転半径を急激に小さくすることによる効果です。例えば台風がその目に近づけば近づくほど風速が上がることを思い出せば理解できますよね。
 それではなぜ全ての選手が球速の出る肘を支点に選ばないのでしょうか? それは肩に比べて肘の方が支えが不安定だからです。支えが不安定になればコントロールが難しくなるわけです。
 コントロールが難しい肘を支点にしてあれだけ正確にサーブをコントロールするサンプラスは、正に天才ですね。

 あくまでも上記は、球速を上げるための一つの要素にすぎず、他にも、体のしなりや回転、足から腕への運動連鎖をうまく機能させる、体の軸を1点にしぼる、相手のボールの球速を利用するなどなど、重要な要素がたくさんありますので、そのことをお忘れ無く。 ...とは言っても、筋力アップもやはり大事ですよ。(笑!)

 


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